【高齢ドライバー】運転免許返納のメリットと円満な話し合い4ステップ

大切な家族だからこそ、安全・安心な毎日を過ごしてほしい…。
そう願うなら、運転免許の自主返納について、そろそろ真剣に考えてみませんか?
この記事では、高齢の親に、納得して「運転卒業」してもらうための、具体的な話し合いのステップを詳しく解説します。
- 親の運転が、最近心配になってきた
- 運転免許を返納させたいけど、どう切り出せばいいか分からない
- 親が運転をやめる気配がまったくない…
高齢ドライバーの親を持つあなたは、ご存知ですか?
75歳以上のドライバーによる死亡事故率は、他の年齢層の約2.2倍なんです。
加齢による身体機能や認知機能の低下は、誰にでも起こりうること。
親の「まだ大丈夫」という言葉を信じるのは、実はとても危険かもしれません。
親の車に同乗している時、次のようなことがあったら、要注意です。
- 駐車場で、何度も切り返して、ようやく駐車…
- 信号が赤なのに、発進しようとする…
- 一時停止の標識に気づかず、ヒヤッとする…
この記事を読めば、運転免許返納のメリット・デメリット、さらに、親の気持ちに寄り添った、話し合いの進め方が分かります。
親の安全、そして家族みんなの安心のために、今、できることから始めましょう。
高齢ドライバーの現状とリスク

高齢ドライバーの事故は、決して他人事ではありません。
ここでは、客観的なデータに基づき、高齢ドライバーの現状とリスクについて解説します。
高齢ドライバーの死亡事故割合
警察庁の統計によると、交通事故による死亡事故件数全体は減少傾向にあります。
しかし、75歳以上の運転免許保有者10万人当たりの死亡事故件数は、75歳未満と比較して、約2.2倍も高くなっています(2022年)。
この数字は、高齢ドライバーによる死亡事故が、他の年齢層と比較して、 起こりやすいことを示しています。

出典:警察庁交通局「令和4年における交通事故の発生状況について」(https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/bunseki/nenkan/050302R04nenkan.pdf)
なぜ高齢ドライバーは危険なのか?

出典:警察庁交通局「令和4年における交通事故の発生状況について」(https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/bunseki/nenkan/050302R04nenkan.pdf)
一般的に、加齢により身体機能や認知機能が低下するとされています。
75歳以上の運転者による死亡事故で最も多い原因は、「操作不適」(ハンドル操作の誤りや、アクセルとブレーキの踏み間違いなど)です。
これらの運転操作ミスは、加齢による身体機能や認知機能の変化と関連している可能性が指摘されています。(※1)
しかし、こうした変化は自分では気づきにくいことも多く、「まだ大丈夫」と過信してしまうケースも少なくありません。
※1 参考:内閣府「令和5年度交通事故の状況及び交通安全施策の現況」
(https://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/r06kou_haku/zenbun/genkyo/feature/feature_1_3.html)
危険な運転の具体的サイン

親の運転に、以下のようなサインが見られたら、注意が必要かもしれません。
- 運転中
- ヒヤリとしたり、ハッとしたりすることが増えた。
- 急ブレーキや急ハンドルをすることが増えた。
- 標識や信号を見落とすことがある。
- 車の状態
- 車体に小さな傷やへこみが増えた。
- 周囲の反応
- 家族や友人から運転を心配されることが増えた。

これらのサインが見られたら、運転能力が低下している可能性が考えられます。
運転免許返納のメリット
「運転免許の返納」と聞くと、「生活が不便になる」といったイメージがあるかもしれません。
しかし、免許を手放すことで、新たな安心やゆとりが生まれます。
ここでは、運転免許返納によって得られる、3つのメリットについて、詳しく解説します。
交通事故のリスクを大幅に減らせる
運転免許を返納することで、自動車事故の加害者になるリスクを大きく減らすことができます。
高齢になると、身体機能や認知機能が変化し、運転に影響が出る可能性があります。
例えば、ハンドル操作の誤りや、アクセルとブレーキの踏み間違いといった操作ミスが起こりやすくなります。
75歳以上のドライバーによる死亡事故の原因で最も多いのが、こうした「操作不適」です。
運転免許を返納することで、親が加害者となる交通事故を未然に防ぐことにつながり、家族みんなが安心して暮らせるようになります。
経済的な負担が軽くなる
車を手放すと、維持費がなくなり、家計の負担を軽減できる可能性があります。
車を所有すると、ガソリン代、駐車場代、保険料、税金、車検費用など、さまざまな費用がかかります。

出典:MOTAモータ(https://autoc-one.jp/knowhow/5016806/)
1年間の車の維持費は、軽自動車が約32万円、普通自動車で約45万円。
この他にも、洗車代、オイル交換代、タイヤ交換代、修理代など、さまざまな費用がかかります。

我が家は駐車場代が月3万円なので、年間の維持費は平均より24万円高くなります…。
これらの維持費がなくなれば、
- 親の趣味や、旅費に使える
- 生活費や将来のための貯蓄に回せる
など、家計にゆとりが生まれます。
車に乗らない分、歩く機会が増える

車での移動が中心だった生活から、徒歩や公共交通機関を利用する生活に変わると、自然と歩く機会が増えます。
- 近所のスーパーまで歩いて買い物に行く
- バスや電車の駅まで歩いていく
このように、日常生活の中で無理なく運動量を増やすことができます。
運転免許返納のデメリットと対策
運転免許返納には、メリットだけでなく、デメリットと感じられることもあります。
しかし、事前にしっかりと対策を考えておくことで、その不安を解消し、スムーズに新しい生活へと移行することができます。
移動手段が制限される
特に地方では、車がないと買い物や通院など、日常生活に支障をきたすのではないかと不安に感じるかもしれません。
しかし、近年、高齢者をサポートするさまざまなサービスが充実してきています。
まずは、利用できる移動手段を確認しましょう。
- 公共交通機関(バス・電車):路線や時刻表を確認。一緒に利用してみるのも良いでしょう。
- タクシー:自治体の割引やタクシー券も調べてみましょう。
- デマンド交通:地域によっては、予約制の乗り合いタクシーがあります。
- 家族の送迎:「週1回は買い物に」など、できる範囲でサポート。
加えて、以下のようなサービスも活用できます。
- 買い物: 食材や日用品の宅配サービス
- 食事: 栄養バランスの取れた配食サービス
これらを上手に利用しながら、新しい生活スタイルを築いていきましょう。
生きがいを失ってしまう可能性がある
長年、車の運転が生活の一部であり、生きがいだった場合、運転をやめることで喪失感を抱くことがあるかもしれません。
運転免許の返納は、親にとって大きな転機ですが、それを機に新しい楽しみを見つけ、充実した毎日を送ることも可能です。
大切なのは、親の気持ちに寄り添うこと。
焦らず、じっくりと時間をかけて、一緒に、新たな一歩を踏み出しましょう。

親子で一緒に、新しい体験を楽しんでみるのもおすすめです!

社会とのつながりが薄れる可能性がある

車での外出が減ると、友人や知人に会う機会が減ったり、地域活動への参加が難しくなったりして、社会とのつながりが薄れる可能性があります。
特に一人暮らしの高齢者は、「誰とも話さない日が続く…」といった状況に陥りやすく、孤独感を深めてしまうことも。
社会とのつながりは、心の健康を保つためにも、非常に重要です。
運転免許返納を機に、新たなつながりを見つけてみてはいかがでしょうか。

地域包括支援センターでは、介護のことだけでなく、地域のイベント情報や高齢者の身近な困りごとについても、無料で相談できます!
円満な話し合いで進める!自主返納4ステップ
親に「運転免許を返納してほしい」と伝えるのは、とても勇気がいることです。
しかし、伝え方次第で、親の反応は大きく変わります。
ここでは、親の気持ちに寄り添いながら、円満に話し合いを進めるための4つのステップを解説します。
ステップ1 情報収集と準備は、しっかりと!

- 自治体のサポート制度を調べる
多くの自治体では、運転免許を自主返納した高齢者に対して、さまざまなサポート制度を設けています。
特典の例:公共交通機関の運賃割引、タクシー券の交付、店舗での割引サービスなど - 代替交通手段を確認する
運転免許返納後の、具体的な代替手段を確認しておくことも重要です。
バス、電車、タクシー、家族の送迎など - 親の運転状況を把握する
親の最近の運転状況について、客観的に把握しておくことも大切です。
ハンドル操作、アクセル・ブレーキ操作ミス、標識の見落とし、車体の傷など - 必要に応じて、協力を依頼する
一人で抱え込まず、必要に応じて、周囲の協力を得ることも検討しましょう。
他の家族や親戚、かかりつけ医、ケアマネジャーなど

特に、かかりつけ医は、親の健康状態を把握しており、客観的な立場からアドバイスをしてくれるため、非常に心強い存在です。
運転免許証の返納後に申請すると発行され、公的な身分証明書として使えます。
「運転経歴証明書」を提示すると、高齢者運転免許自主返納サポート協議会の加盟店などで、さまざまな特典や割引サービスを受けられる場合があります。
特典の内容は地域によって異なるため、一度確認してみましょう!
一般社団法人 全日本指定自動車教習所協会連合会(https://www.zensiren.or.jp/kourei/return/relist.html)
ステップ2 話し合いのきっかけは、自然に!
「最近、運転していてどう?」「何か心配なことある?」など、普段の会話の中で、さりげなく尋ねてみましょう。

高齢ドライバーのニュースや、他の人の話をきっかけに、「そういえば、運転免許の更新、どうするの?」と切り出すのも、自然な流れかもしれません。
- いきなり「免許返納」の話を切り出す。
- 「危ないから」と頭ごなしに言う。
- 親の言い分を聞かずに、一方的に話す。
ステップ3 気持ちに寄り添い、メリットを丁寧に!
いきなり「危ないから返納して!」と言うのはNGです。
まずは「心配している」という気持ちをしっかりと伝えましょう。
その後で、自主返納のメリットを具体的に、分かりやすく説明します。
親の言い分にもじっくり耳を傾け、「そうだよね」「分かるよ」と共感する姿勢を見せることが大切です。
親が運転免許返納の話し合いの際に言いそうなことと、それに対する返答例は以下です。
【親が言いそうなこと、それに対する返答例】
- 「まだ自分は大丈夫。運転には自信がある。」
-
「そう思いたい気持ちは分かるけど、高齢者の事故は増えているんだよ。何かあってからでは遅いから、心配なの。」
- 「車がないと、買い物にも行けないし、病院にも行けない。」
-
「確かに不便なこともあるかもしれないけど、バスやタクシーを使ったり、私たちが送り迎えしたり、できる限りのサポートはするから。」
- 「まだボケてない! 年寄り扱いしないでほしい!」
-
「年齢だけで決めつけているわけじゃないんだ。ただ、誰でも年を取れば、身体の機能は少しずつ変化していくものだから…。心配なのは、大切に思ってるからなんだよ。」
- 「運転をやめたら、楽しみがなくなってしまう…。」
-
「新しい楽しみを見つけようよ! 旅行に行ったり、美味しいものを食べに行ったり、何か一緒にできることを探そうよ。」
- 「でも、やっぱり運転したい…。」
-
「その気持ちも分かる。でも、もしものことを考えると心配なんだよ。だから、少しずつでも考えてみてほしいんだ。」
ステップ4 代替案は、具体的に!
「運転をやめたら、どうすれば…?」親の不安に、 具体的な代替案 を提示することが、円満な話し合いのポイントです。
- 移動手段:公共交通機関、タクシー、デマンド交通、家族の送迎、近所の人の協力、自転車など
- 買い物:宅配、移動販売、家族/近所の人の協力
- 食事:配食、家族のサポート、外食・中食
- 通院:タクシー、家族の送迎、病院の送迎、介護タクシー
- 趣味・生きがい:新しい趣味、地域活動、習い事
【まとめ】親の安全、家族みんなの安心のために
今回は、高齢の親の運転免許返納について、メリット・デメリット、そして円満な話し合いのステップを詳しく解説してきました。
すべてを読み終えた今、「免許返納」に対する考え方に変化はありましたか?
- 高齢ドライバーの事故は他人事ではない
- 運転免許返納には、メリットがたくさんある
- デメリットへの対策も可能
- 大切なのは、円満な話し合い
具体的な、免許返納のメリットは以下の3つです。
- 交通事故のリスクを大幅に減らせる
- 経済的な負担が軽くなる
- 車に乗らない分、歩く機会が増える
運転免許返納は、親にとっても、家族にとっても、大きな決断です。
親に運転免許の返納を切り出すのは、少し気が重いかもしれませんが、そろそろ必要な時期かもしれません。
親の安全を守り、家族全員の安心のために、まずは情報収集から始めてみませんか?